19 武隈の松
19 武隈の松(たけくまのまつ)
地図
原文
岩沼(いわぬま)の宿(しゅく)
武隈の松(まつ)にこそ、目覚(さむ)る心地(ここち)はすれ。
根(ね)は土際(つちぎわ)より二木(ふたき)にわかれて、昔(むかし)の姿(すがた)うしなはずとしらる。
まず能因法師(のういんほうし)思ひ出(い)づ。
その昔(かみ)むつのかみにて下(くだ)りし人、この木を伐(きり)て、名取川(なとりがわ)の橋杭(はしぐい)にせられたることなどあればにや、「松(まつ)はこのたび跡(あと)もなし」とは詠(よみ)たり。
代々(よよ)、あるは伐(きり)、あるひは植継(うえつぎ)などせしと聞くに、今将(いまはた)、千歳(ちとせ)のかたちととのほひて、めでたき松(まつ)のけしきになんはべりし。
「武隈(たけくま)の松(まつ)みせ申(もう)せ遅桜(おそざくら)」
と挙白(きょはく)といふものゝ餞別(せんべつ)したりければ、
桜(さくら)より 松(まつ)は二木(ふたき)を 三月(みつき)越(ご)し
最終更新時間:2010年02月19日 22時27分32秒