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43 全昌寺

43 全昌寺

地図


原文


曽良(そら)は腹(はら)を病(やみ)て、伊勢(いせ)の国長嶋(ながしま)といふ所(ところ)にゆかりあれば、先立(さきだち)て行(ゆ)くに、

  行行(ゆきゆき)て たふれ伏(ふす)と も萩(はぎ)の原 曽良

と書置(かきおき)たり。

行(ゆ)くものの悲(かな)しみ、残(のこ)るもののうらみ、隻鳧(せきふ)のわかれて雲にまよふがごとし。

よもまた、

  今日よりや 書付(かきつけ)消(け)さん 笠(かさ)の露(つゆ)

大聖持(だいしょうじ)の城外(じょうがい)、全昌寺(ぜんしょうじ)といふ寺にとまる。

なお加賀(かが)の地なり。

曽良(そら)も前の夜この寺に泊(とまり)て、

  終宵(よもすがら) 秋風(あきかぜ)聞くや うらの山

と残(のこ)す。

一夜(いちや)の隔(へだ)て、千里に同じ。

われも秋風(あきかぜ)を聞きて衆寮(しゅりょう)にふせば、明(あけ)ぼのの空近(ちこ)う、読経(どきょう)声すむままに、鐘板(しょうばん)鳴(なり)て食堂(じきどう)に入(い)る。

今日は越前(えちぜん)の国へと、心早卒(そうそつ)にして堂下(どうか)に下るを、若(わか)き僧(そう)ども紙・硯(すずり)をかかえ、階(きざはし)のもとまで追(おい)来たる。

折節(おりふし)庭中(ていちゅう)の柳(やなぎ)散(ち)れば、 

  庭(にわ)掃(はき)て 出(い)でばや寺に 散(ちる)柳(やなぎ)

とりあへぬさまして草鞋(わらじ)ながら書(かき)捨(す)つ。

[おくのほそ道,石川県,加賀市,大聖寺,43 全昌寺]

最終更新時間:2010年02月21日 10時30分57秒