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46 福井

46 福井(ふくい)

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原文

福井(ふくい)は三里(さんり)計(ばかり)なれば、夕飯(ゆうめし)したためて出(い)づるに、たそがれの道たどたどし。

ここに等栽(とうさい)といふ古き隠士(いんじ)あり。

いづれの年にか江戸(えど)に来たりてよを尋(たず)ぬ。

遥(はるか)十(と)とせあまりなり。

いかに老(おい)さらぼひてあるにや、はた死(しに)けるにやと人に尋(たず)ねはべれば、いまだ存命(ぞんめい)してそこそこと教(おし)ゆ。

市中(しちゅう)ひそかに引入(ひきいり)て、あやしの小家(こいえ)に夕顔(ゆうがお)・へちまのはえかかりて、鶏頭(けいとう)はは木々(ははきぎ)に戸(と)ぼそをかくす。

さてはこのうちにこそと門(かど)を扣(たたけ)ば、侘(わび)しげなる女の出(い)でて、「いづくよりわたりたまふ道心(どうしん)の御坊(ごぼう)にや。

あるじはこのあたり何がしといふものの方(かた)に行(ゆき)ぬ。

もし用あらば尋(たず)ねたまへ」といふ。

かれが妻(つま)なるべしとしらる。

むかし物がたりにこそかかる風情(ふぜい)ははべれと、やがて尋(たず)ねあひて、その家に二夜(ふたよ)とまりて、名月(めいげつ)はつるがのみなとにとたび立(だつ)。

等栽(とうさい)もともに送(おく)らんと、裾(すそ)おかしうからげて、道の枝折(しおり)とうかれ立(たつ)。

[おくのほそ道,福井県,福井市,46 福井]

最終更新時間:2010年01月14日 21時04分21秒